2018年08月06日

ネットラジオ・バイロイト2018 ワルキューレ


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DIE WALKÜRE

Musikalische Leitung : Plaćido Domingo
Inszenierung : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert, Jens Crull

Siegmund : Stephen Gould
Hunding : Tobias Kehrer
Wotan : John Lundgren
Sieglinde : Anja Kempe
Brünnhilde : Catherine Foster
Fricka : Marina Prudenskaya
Gerhilde : Caroline Wenborne
Ortlinde : Christiane Kohl
Waltraute : Simone Shröder
Schwertleite : Marina Prudenskaya
Helmwige : Regine Hangler
Siegrune : Mareike Morr
Grimgerde : Mika Kaneko
Rossweisse : Alexandra Petersamer

2018.7.31

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音源のみの雑感、と言っても、
これに関してはリングのない年度の余興のようなものだし、特に感想はない。
77才のフルマラソン完走を皆で応援しよう!というイベント。

その分再確認できたのが、オケの力量と曲本来の持つ構成力。
楽譜通り鳴っていればある程度の効果が見込めてしまうから不思議だ。
そしてどんなにズレまくっても絶対に着地させる、完走するという、
プロの仕事に対する姿勢を勉強させてもらった次第である。

歌手に関しても、各幕半分程度しか指揮が持たないので、
割り切ってそれなりに自由に合わせるしかないという様子。
比較的聞けるのがヴォータンのルンドグレンとフンディングのケーラー。
ジークムントのグールドはトリスタンの時も絶好調という程ではなかったのだが、
次第に伴奏のテンポに締まりがなくなっていくため、
この日は少し気の毒だった。
メインの女声は元々高音ぶら下がり&フレージング不安定組だから、
劇的に改善されたということはない。

今後のリング上演のない年にも、こうしたドキュメンタリー番組を作りそうな公演の日を設けるのかどうかはわからないが、
できればもう少し音楽的な企画になってくれると助かる。

posted by rikka at 18:57| ネットラジオ・バイロイト 2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ネットラジオ・バイロイト2018 さまよえるオランダ人

音源のみの感想。

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DER FLIEGENDE HOLLÄNDER

Musikalische Leitung : Axel Kober
Inszenierung : Jan Philipp Gloger
Bühne : Christof Hetzer
Kostüm : Karin Jud
Licht : Urs Schönebaum
Video : Martin Eidenberger
Dramaturgie : Sophie Becker

Daland : Peter Rose
Senta : Ricarda Merbeth
Erik : Tomislav Mužek
Mary : Christa Mayer
Der Steuermann : Rainer Trost
Der Höllander : Greer Grimsley

2018.7.30

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@ 音楽

ここでまた1人、重厚な音作りのコーバーが帰ってきたおかげで、
今年のバイロイトの音楽はかなり力押しの様相を呈している。
凄いのはオケで、
毎回聴衆の意識を音圧で消し飛ばしにかかるような演奏に耐えきっていること。
この日も序曲から煽りまくる。音の嵐の中に一気に引き込まれることに。

演奏については前進を感じる部分とそうでもない部分、
一進一退というところ。
以前から良かった序曲は、ダイナミクスや細部強調の効果で、
一層雄弁な音楽になっている。1幕のオランダ人のアリアも然り。
瞬間的な大音量に耐えうるグリムズレイなら、迫力は申し分ない。

伴奏の合いの手や刻みの響きについても、
コーバーならではの重みが含まれていて興味深く聞ける。
(個性的な音色だが、確かにワーグナー、
という雰囲気の刻みになるところが面白い。)

ただ、ブランクや一部歌手変更の影響か、
歌唱と伴奏の呼吸には時々躓きがある。
全体の流れは一昨年までの方が柔軟だったかもしれない。
回を重ねればいずれ修正されるだろうが、
こういう音楽なら、むしろオケ曲の方を聞いてみたい気もする。

A 歌手

オランダ人のグリムズレイ…一昨年のT.J.マイヤーを、
キャラクター寄りの表現はそのままに、声をタフにした感じ。
この後のワルキューレのヴォータンと、
二つの役をルンドグレンとダブルキャスト。
個人的には、主役にはもう少しクセのないフレージングを望みたいのだけれど
(ヴォータンを歌うなら尚更)、あくまで理想は理想。
ダンボール演出にはもったいないキャスティングだし、
歌より伴奏ばかり聞いているということがないだけで十分だ。

エリックのムジェク…この演出に登場するのは4度目。
安定しないキャストの中で、唯一聞く度に上手くなっている印象あり。
今後の更なる活躍を祈る。

それと舵取りにR.トロスト。懐かしい名前だが、
出番が少ないので音源だけでは何とも言えない。

他のキャストは一昨年までと特に変わりなし。
ダーラントのP.ローズは2幕のアリアの最後で裏返ったものの、
許容範囲内。ほぼ無難にまとめた。
ゼンタのメルベトは相変わらずバラードが聞き苦しい。
また聞く羽目になるとは思わなかったが、仕方ない。スルーに限る。
C.マイヤーは好調維持。トリスタン同様、芝居での存在感がある。

男声合唱も大体大きく拾えている。
3幕は伴奏に少し緩急の追い込みが足りなかったかもしれない。


posted by rikka at 17:33| ネットラジオ・バイロイト 2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ネットラジオ・バイロイト2018 ニュルンベルクのマイスタージンガー

音源のみの感想。

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DIE MEISTERSINGER VON NÜRNBERG

Musikerlische Leitung : Philippe Jordan
Inszenierung : Barrie Kosky
Bühne : Rebecca Ringst
Kostüm : Klaus Bruns
Dramaturgie : Ulrich Lenz
Licht : Franck Evin
Chorleitung : Eberhard Friedrich

Hans Sachs, Schuster : Michael Volle
Veit Pogner, Goldschmied : Günther Groissböck
Kunz Vogelgesang, Kürschner : Tansel Akzeybek
Konrad Nachtigal, Spengler : Armin Kolarczyk
Sixtus Beckmesser, Stadtschreiber : Johannes Martin Kränzle
Fritz Kothner, Bäcker : Daniel Schmutzhard
Balthasar Zorn, Zinngießer : Paul Kaufmann
Ulrich Eisslinger, Würzkrämer : Christopher Kaplan
Augustin Moser, Schneider : Stefan Heibach
Hermann Ortel, Seifensieder : Raimund Nolte
Hans Schwarz, Strumpfwirker : Andreas Hörl
Hans Foltz, Kupferschmied : Timo Riihonen
Walther von Stolzing : Klaus Florian Vogt
David, Sachsens Lehrbube : Daniel Behle
Eva, Pogners Tochter : Emily Magee
Magdalene, Evas Amme : Wiebke Lehmkuhl
Ein Nachtwächter : Tobias Kehrer

2018.7.28

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@ 音楽

前日のトリスタンとは逆に、このマイジンは演出を見た方がいいだろう。

長大かつ緻密、凝った多彩な表現が各所に散りばめられた曲に対し、
全てを鳴らし過ぎている一方で、細部への配慮が十分に行き届いていない状態。
どうしても雑で平板な音楽になりがちだ。
オケがいいので音はそれほど荒れていないが、
聞き所は自然と小編成の部分に限られてしまう。

理想は音源だけでも喜劇が成り立つように、
いくつかの旋律や動機に的を絞って、
歌唱に抒情性や物語性を添えられれば…
と言っても、困難さは重々承知。
幸い、山場の作り方はそう悪くないし、
緩急に関してはとても自然な流れ。歌手の芝居をうまく盛り上げている。

後はその緩急に見合うバランスで響きがまとまるかどうか。
何か、もう一つか二つ、観客に伝わるような個性を打ち出せると、
仮にそれが無形ということであっても、
説得力が増す気がするのだが。

A 歌手

今年もザックスのフォレとベックメッサーのクレンツレの芝居には笑わせてもらった。
特にフォレは演出上ずっと舞台に出たままのはずだけれど、
声の伸びは今年の方がいいような気がする。
3幕のいくつか厳しい所は抜き気味にうまくカバー。

クレンツレは以前METでも歌っていたので、
あのエアギターならぬエアリュートのギャグは、
シェンク演出のT.アレンの芝居を思い出す。
参考にしたりしているのかも。

ヴァルターのフォークトはやや不調。
声枯れ気味で、ラストは少しバテているような様子が窺える。
バイロイトでも真夏日以上の気温が何日か続いていたそうなので、
大事に至らないことを祈る。

他の男声では昨年に引き続きダーフィトのベーレと、
一昨日のティトゥレルで気になっていた、夜警のケーラーが好印象。
どちらもフレージングに品がある。
ポーグナーのグロイスベックは2-2が良かった。

エーファのE.マギーはバイロイトには久々の登場。
声の表情が大変豊かなコジマの誕生だ。
台詞も回るので、レーネやザックスとの会話が楽しい。

五重唱だけはうまく乗れなかったのだが、
指揮の方が妙に構えすぎのきらいがあり、
昨年のシュヴァネヴィルムスも歌いにくそうにしていた。
今年も改善は見られず。惜しい。
レーネのレームクールはこれまで通り安定していて、文句なしの出来。

合唱はまずまず。3幕4場から5場への流れは、
伴奏の雑さを多少引きずっている。

posted by rikka at 16:43| ネットラジオ・バイロイト 2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ネットラジオ・バイロイト2018 トリスタンとイゾルデ

音源のみの感想。

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TRISTAN UND ISOLDE

Musikalische Leitung : Christian Thielemann
Inszenierung : Katharina Wagner
Bühne : Frank Philipp Schlößmann / Matthias Lippert
Kostüm : Thomas Kaiser
Licht : Reinhard Traub
Dramaturgie : Daniel Weber
Chorleitung : Eberhard Friedrich

Tristan : Stephen Gould
Marke : René Pape
Isolde : Petra Lang
Kurwenal : Iain Paterson
Melot : Raimund Nolte
Brangäne : Christa Mayer
Ein Hirt : Tansel Akzeybek
Ein Steuermann : Kay Stiefermann
Junger Seemann : Tansel Akzeybek

2018.7.27

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@ 音楽

凄絶。これは間違いなく演出を見ないほうがいい演奏。

昨年の2幕の夜の歌あたりから、
音楽が„namenlos“なものになる瞬間があったのだけれど、
ついに今年はコスモを突き抜けて、彼岸の白い世界に到達した感あり。
響きに悲劇の予兆が含まれない分、演奏の凄味が増すにつれて、
始まりから終わりへ向かう、不可逆な時間軸が抜け落ちてゆく。
残るは研ぎ澄まされた刹那の音と響きのみ。
つぶやきでも触れたが、こうなるともう好き嫌いや甲乙という,
単純な判断基準では量れない。
ただ音圧に吹き飛ばされるのみ。

とにかくこの日のオケは驚異的な出来栄えだった。
第1幕への前奏曲が短い助走だった他は、
ラストまで神がかりな精度と破壊力を誇る。
幸い歌唱の方がほぼ並走できているので、劇効果を阻害されることもない。
聞き所は全て、十二分にカタルシスを得られる。

個人的に1つあげるとすれば、ラストの愛の死の伴奏だろうか。
やわらかな音の純粋美。以前ティーレマンのパルシファルで聞いた、
天使の動機の祝福を想起させるところがある。

A 歌手

トリスタンのグールド…声の調子は昨年の方が良かったかもしれないが、
今年も3幕のティーレマンの重圧を凌いでみせた。
終わりよければすべてよし。

マルケ王のパペ…最後のハイトーンの躓きにヒヤッとさせられたものの、
大事には至らず。
確か衣装はコートだったような。あまり暑くなければよいのだが。
表現力があるだけに、感情移入の方向に行かない伴奏は少し惜しい。

クルヴェナールのパターソン以下、他の歌手陣は、
ほぼ昨年と同等の仕事を継続か、上昇傾向にあり。
男声では若水夫&牧童のアクゼイベク。
この日は落ち着いたフレージングで、昨年からまた一歩前進したような気がする。

女声についても、P.ラングは一応ティーレマンの伴奏に喰らいついているし、
C.マイヤーも声質は仕方ないが、表現や台詞回しの方が改善されたので、
それほどストレスを感じずに音楽に集中できる。

posted by rikka at 15:46| ネットラジオ・バイロイト 2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月05日

ネットラジオ・バイロイト2018 パルシファル

音源のみの感想。

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PARSIFAL

Musikalische Leitung : Semyon Bychkov
Inszenierung : Uwe Eric Laufenberg
Bühne : Gisbert Jäkel
Kostüm : Jessica Karge
Licht : Reinhard Traub
Video : Gérard Naziri
Dramaturgie : Richard Lorber

Amfortas : Thomas J. Mayer
Titurel : Tobias Kehrer
Gurnemanz : Günther Groissböck
Parsifal : Andreas Schager
Klingsor : Derek Welton
Kundry : Elena Pankratova

1. Gralsritter : Tansel Akzeybek
2. Gralsritter : Timo Riihonen

1. Knappe : Alexandra Steiner
2. Knappe : Mareike Morr
3. Knappe : Paul Kaufmann
4. Knappe : Stefan Heibach

Klingsors Zaubermädchen :
Ji Yoon
Katharina Persicke
Mareike Morr
Alexandra Steiner
Bele Kumberger
Sophie Rennert

Altsolo : Wiebke Lehmkuhl

2018.7.26

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@ 音楽

ビシュコフのパルシファルは、彼の録音や、
他のオケとの公演の音源で聞き取れる音楽と、
根本のところでは一貫しているが、
それがバイロイトのオケと場によって、発展するものもあれば、
異なる印象を与えるものもある、という感じだろうか。

特に音作りの点ではハッとさせられる瞬間が多かった。
輪郭をにじませた、弦の中音のくぐもった響き。
そこに聖餐のTpや、木管高音、
弦の高音のトレモロなどが乗せられた時の明暗のコントラスト。
ちょうど差し色を差したような鮮やかさが生まれる。
物語内容に沿って、その楽器が使われている必然性を、
聴衆に伝わるように提示できる指揮。

また、このくぐもった響きのかたまりが常に存在することが、
物語世界を蝕んでいる心痛を、グレーゾーンとして浮き彫りにする。
同様の中音のぼかしはヘンヒェンにもあるのだが、
Mitleidの要因に利用しているかどうかが決定的な違い。
3幕ラストの頃には、気付けばこの和声が浄化されていて、
清廉さに心を動かされることになる。

伴奏は強奏が多少割れる他は、とても抒情的で落ち着く流れ。
まとまったアリアで困難が予想される部分に差し掛かると、
ごく自然にテンポアップしつつ盛り上げをサポート。全くそれと悟らせない。
今年の公演の中では唯一感情移入できる演奏。

あとは山場が上手く当たるかどうかで、
過去の演奏では空振りが多く、物足りなさを覚えていたのだけれど、
この日は1幕でやりすぎた以外は大体まとまっていて一安心。
(まったく、パルシファルという曲は、ピストルならぬ、
大砲が登場したらそれは発射されなければならないといういい例だ。)

A 歌手

大健闘だったのがクンドリーのパンクラトヴァ。深い情感。
告解と2幕終盤の迷いを投げかける迫力で多少のことは全て帳消しにできる。
現状、安定した声量と表現力で2幕を持たせられる歌手は少ない上に、
最近のバイロイトは女声に恵まれなかったので、
安心して聞けるキャストが増えるのはとても助かる。

グルネマンツのグロイスベックも同じく大健闘。
昨年までのツェッペンフェルトからこの役を引き継いだのだが、
個人的には彼くらいのバス声の方が好み。
余裕の問題かキャラ作りなのかはわからないけれども、感情表現が控え目なところに、
往年の名歌手達の厳格なグルネマンツ像を重ねてしまった。

他の主役以外の男声では、クリングゾールのウェルトンに加えて、
アンフォルタスがT.J.マイヤー、ティトゥレルがケーラーに交代。
3人ともノーブル役寄りの歌唱なので、聖杯城の病み加減が多少すっきりしたかもしれない。
皆存在感のある仕事をしている。

主要キャストで唯一のアキレス腱がタイトルロールのシャーガー。
今年は完全にノーコンテノールと化しているが、
もっと酷い歌唱の例は過去にいくらでもあるので、
伴奏に集中すれば聞き流せる。

合唱では3幕の聖騎士合唱の対話形式の非難や、
花の乙女のアンサンブルの入り方が記憶に残る。
花園の音楽からクンドリーが登場する幻惑への変化も良かった。

posted by rikka at 18:31| ネットラジオ・バイロイト 2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ネットラジオ・バイロイト2018 ローエングリン

今年の初演出はローエングリン。
BSで映像放送予定あり。(8月27日(月)【8月26日(日)深夜】0:00より プレミアムシアター)

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LOHENGRIN

Musikalische Leitung : Christian Thielemann
Inszenierung : Yuval Sharon
Bühne & Kostüm Neo Rauch & Rosa Loy
Licht : Reinhard Traub

Heinrich der Vogler : Georg Zeppenfeld
Lohengrin : Piotr Beczała
Elsa von Brabant : Anja Harteros
Friedrich von Telramund : Tomas Konieczy
Ortrud : Waltraud Meier
Der Heerufer des Königs : Egils Silins

1. Edler Michael Gniffke
2. Edler Eric Laporte
3. Edler Kay Stiefermann
4. Edler Timo Riihonen

2018.7.25

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@ 音楽

初日から音圧のド迫力で押し通す。
まるで4DXシネマのような単純明快、気分爽快な音楽。
音源をただ聴いている分には、
ヒロインがパワハラでメンヘラ等の細かい内容は一切お構いなし。
気軽に楽しめるので、入門編の演奏としてお勧めかもしれない。

聞き所は当然1幕と3幕3場。
場の音楽が重厚な構成になる、ハインリヒ王が登場している場面だ。
(ファンファーレや王のアリアで金管アンサンブルが多用される他、
裁きやローエングリンの動機、朝焼け(Morgenrot)など、
大編成で王の権威と軍勢の威容を示す。)

単に重厚なだけで響きがまとまらないと音が荒れて逆にストレスになるし、
インテンポで流されて体育会系に傾きすぎても困るのだが、
その辺りの匙加減はティーレマンの長所。

また、2幕1場のダークサイドも深刻すぎて面白い。
情緒が伴わない、ひたすらシンプルな闇の圧力。
こうした音のままに直球なところは彼が振ったジークフリートなどでも表れていると思う。

さすがに3幕2場の二重唱の場面くらいは悲観や感傷がないと物足りないのだけれど、
自由な時のティーレマンは細かく緩急を練り上げようとすると迷走を呼ぶので、
さっと通り過ぎるくらいでちょうどいい。
実際、エルザの大聖堂への行進は、演出とのタイミング合わせかどうかは不明だが、
妙な緩急で大聖堂への徘徊になりかけている。

A 歌手

まずはタイトルロールのベチャワ。期待通り。
伴奏の響きに悲劇性がない分を、彼が歌う禁問が補ってくれる。
盲従を強要しなければならない悲愴感が切ない。
フレージングには既に王者の品格あり。
堂々たる名乗りの後は、一瞬聖杯が降臨したかのような静けさに。言うことなし。
他の持ち役も豊富にあるから、今後どのくらい歌い続けるかはわからないが、
大事に歌ってほしい。

ハインリヒ王のツェッペンフェルトは盤石。決闘前の神への宣言など、
導入のティーレマンの音圧がかなり強烈だったにもかかわらず、
張り上げても崩れない余裕が出てきたのは嬉しい限り。
軍令使のシリンスも特に波乱なし。

テルラムントのコニエチュニーだけは不明瞭な言葉回しで崩しすぎ。
悪役の風格についてはマイヤーと重厚な伴奏にお任せの形。

今回でバイロイトを引退するという、W.マイヤーのオルトルートは貫禄の一言。
2幕1場、先走りがちなテルラムントをすっと落ち着かせ、
伴奏を自分の間合いに持っていく手際が見事。
嵐のようなカーテンコールだった。

エルザのハルテロスは1幕の終盤辺りから安定してくる。
台詞へのこだわりと繊細な感情表現は十分伝わってくるのだが、
ヒロインの細やかさとは縁遠い伴奏ということもあり、
音源だけではあまり感情移入できず。
どの程度効果があるかは映像を見てみないと何とも言えない。

合唱は初演出ということもあり、アインザッツが合いにくいものの、
ボリュームはよく拾えている。これから修正されていくだろう。

posted by rikka at 17:55| ネットラジオ・バイロイト 2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月12日

ネットラジオ・バイロイト2017 神々の黄昏

音源のみの感想。

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Götterdämmerung

Musikalische Leitung : Marek Janowski
Regie : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm : Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert Jens Crull
Chorleitung : Eberhard Friedrich
Technische Einrichtung 2013-2014 : Karl-Heinz Matitschka

Siegfried : Stefan Vinke
Gunther : Markus Eiche
Alberich : Albert Dohmen
Hagen : Stephen Milling
Brünnhilde : Catherine Foster
Gutrune : Allison Oakes
Waltraute : Marina Prudenskaya

1. Norn : Wiebke Lehmkuhl
2. Norn : Stephanie Houtzeel
3. Norn : Christiane Kohl

Woglinde : Alexandra Steiner
Wellgunde : Stephanie Houtzeel
Floßhilde : Wiebke Lehmkuhl

2017.8.3.

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@ 音楽

再聴する度にしみじみ思う。この大編成で重厚な黄昏を、
過不足なくまとめることがいかに優れているか。
アンサンブルが整っていることを前提にしても、
重厚さに傾けば集中とスタミナ枯渇、
シンフォニックすぎて動機に意味がのらなすぎても、
語りの場面の重要性が薄れるし、
歌に合わせてただインテンポなだけではドラマ不足。
緩急やダイナミクスを動かすにも、
大編成を瞬間的にバランスよく鳴らすのはなかなか困難な一方、
響きの充実を伴わないスロウダウンだと間延び。

とにかく疲れる理由の方が先に思いつく中で、
そうした要素に当てはまらない演奏に出会えたら。
そしてもしその演奏が、自分の好みのポイントを1つか2つでもおさえてくれていたら。
しかも録音ではなく、生中継で。
そのような機会はもはや僥倖と呼べる(…ということを、
歴戦の猛者の方々ならきっとお分かりいただけると思う)。
この2年は感謝しかない。

昨年同様、音楽的にはほぼ全てが聴き所なのだけれども、
終盤は主役の乱れが無視しづらくなってくるので、前半の方が集中しやすいかも。
2-3のハーゲンから5場までの劇的展開は今年も凄惨な迫力で決まっている。
葬送は前半のヴェルズンクの苦悩の闇と後半の英雄を称える光が、
Tpの剣の動機を境に鮮やかに対を成す。ヤノフスキの形。

A 歌手

まずはハーゲンのMilling。声がやや重く太くなって、
ハーゲンのような張り上げる悪役にも釣り合うようになってきた。
動機の鋭い後押しもあるが、元々表現力は確かだから、
彼の場面は芝居を含めまとまっている。

ジークフリートのVinke…毎回こんな酷い歌でも最後まで持つから不思議だ。
素晴らしい伴奏付きのジャイアンリサイタル。

ブリュンヒルデのFoster…登場する3日の内、出来はこの日が一番悪かった。
伴奏に影響が出ない程度に持ってくれればよかったのだが。

他はこれまでの印象とほぼ変化なし。
アルベリヒのDohmenは好調継続。この日の2-1も緊張感がみなぎる。
グンターのEicheは芝居メイン、グートルーネのOakesは3幕はまずまず。
ヴァルトラウテのPrudenskayaは安定しない。1-3は伴奏の語りが胸にしみる。
ラインの乙女は今年はきちんと出られていたが、まとまりはもう一つ。
内2人が兼任しているノルンではマイジンも良かったLehmkuhlが好印象。


ラベル:バイロイト2017
posted by rikka at 00:26| ネットラジオ・バイロイト 2017 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ネットラジオ・バイロイト2017 ジークフリート

音源のみの感想。

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Siegfried

Musikalische Leitung : Marek Janowski
Regie : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm : Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert Jens Crull
Technische Einrichtung 2013-2014 : Karl-Heinz Matitschka

Siegfried : Stefan Vinke
Mime : Andreas Conrad
Der Wanderer : Thomas J. Mayer
Alberich : Albert Dohmen
Fafner : Karl-Heinz Lehner
Erda : Nadine Weissmann
Brünnhilde : Catherine Foster
Waldvogel : Ana Durlovski

2017.8.1

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@ 音楽

鋭く、かつスタイリッシュ。
ヤノフスキのワーグナーに好感を抱く理由のひとつは、王道の物語だということ。
(演出はともかく、音楽まで最初からラノベ以下のヘタレ主人公を想定する人はいないだろうけど)
その端正な音楽は、理想の神話世界を想起させる。
英雄は常に凛々しく、儚く美しい女性は受難で更に清められ、
善悪、愛憎、あらゆる激突が、突き詰めれば純粋な響きで勇壮に描かれてゆく。
一見絵画のような抽象的な美だが、そこに内実を与えているのが、
王道を貫く真摯さ。
恋愛関連のフレーズの切なさはもちろんのこと、
例えばミーメ絡みの場面などはもう少しコミカルに作る事も可能だけれど、
ヤノフスキの音楽はひたすら誠実で真摯。
殺意や悲哀はそれそのもので、
シニカルな笑いを被せて婉曲な表現にするようなことはない。
そのただ直向きな情熱に心を動かされるのだ。

音楽が複雑になっている分、
ここぞという決め所の職人芸は前の2晩以上に聞き取れると思う。
歌唱があまり崩れていない方が集中できるので、
聞き所の優先順としては1-2の問答から3場の炎の幻影にかけての劇的展開や、
2-1の呪いの火花散る邂逅、3-1のクライマックス、
3-2の炎越えから岩山の頂上に至る間奏あたりが先だろうか。
鍛冶の歌のハイテンションな伴奏や、
目覚めの後の愛の挨拶でヴェルズンクのフレーズが昇華する様なども美技が味わえる。

A 歌手

ジークフリートのVinke…ほんと、こんなに無意味なハイCフィニッシュも滅多に聞けない。

ミーメのConrad…黄金に続いての大熱演。いくつか厳しめのところはあるが、
芝居で十分カバーできているし、
ここまで回せるキャラクター役の歌手となるとかなり限定されるはず。
好調が維持されることを祈る。

さすらい人のT.J. Mayer…徐々に上げていく、いつもの慎重なペース配分。
まだ高音は明るめなので前夜のLundgrenからするとかなり若返っているが、
彼も気迫のこもった熱演。気になったのが3-1。もしかしたらむせてたかも。
歌に影響がなくてよかった。

他に好調を維持していたのはアルベリヒのDohmen。
今年は一際凄惨に決めている。ファーフナーのLehnerは大蛇の特殊効果が欲しいところ。

女声陣はブリュンヒルデのFosterを筆頭にエルダのWeissmann、小鳥のDurlovski、
3人まとめて不安定さに特に進展なし。


ラベル:バイロイト2017
posted by rikka at 00:20| ネットラジオ・バイロイト 2017 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月09日

ネットラジオ・バイロイト2017 ワルキューレ

音源のみの感想。

・・・・・・・

Die Walküre

Musikalische Leitung : Marek Janowski
Regie : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm : Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert Jens Crull
Technische Einrichtung 2013-2014 : Karl-Heinz Matitschka

Siegmund : Christopher Ventris
Hunding : Georg Zeppenfeld
Wotan : John Lundgren
Sieglinde : Camilla Nylund
Brünnhilde : Catherine Foster
Fricka : Tanja Ariane Baumgartner
Gerhilde : Caroline Wenborne
Ortlinde : Dara Hobbs
Waltraute : Stephanie Houtzeel
Schwertleite : Nadine Weissmann
Helmwige : Christiane Kohl
Siegrune : Mareike Morr
Grimgerde : Simone Schröder
Rossweisse : Alexandra Petersamer

2017.7.30

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@ 音楽

今年も精悍な立ち上がり。
緩急こそ多少は歌手に左右されるが、
黄金に引き続き、表現に遊びの要素を付加する余裕が生まれ、落ち着いた劇運びになった。
やはり特筆すべきはこの純粋な悲観漂う響き。
今年は最初からほぼ彼の音が引き出せているので、感慨もひとしおだ。
つぶやきでも触れたが、ジークリンデの動機が上昇しつつふわりと広がる美しさや、
「あなたこそ春」の幻想的な雰囲気はちょっと他では聞けない。
次の晩のジークフリートほど闇は濃くないが、上昇系に常に光への希求が感じられる。
その切なさに感情移入せずにいられない。

他、この日に印象的だったのは歌手へのフォローの早さ。
オケの反応も非常に自然で手際がよかった。
去年から歌っている歌手に関してはある程度予測可能だろうから、
見極めがきちんと当たっているのかもしれない。

2・3幕の山場に関しては(一部を除いて)歌唱が大きく崩れる心配がなかったか、
スマートなacce&crescで一気に駆け抜けて頂点だけ溜めたり、
逆に前後も頂点も緩急を動かして劇的効果を高めるなど、
比較的自由な作り方ができているのが素晴らしい。

語りの合いの手はとにかく心に突き刺さるような鋭く的確な表現ばかりなので、
物語の流れに説得力が増す。
カタルシスの衝撃はいや増し、自然とその後の音楽は胸に迫るものになる。

A 歌手

ヴォータンのLundgren…彼の奮戦のおかげで、
昨年伴奏とずれていた2-2のモノローグが形になり、かなり聞き応えある音楽になっている。
3幕もいくつか以外は冷静な歌い回し。
少し前までは告別前に燃え尽きるかどうかを心配しなければならなかった役に、
完走以上のことを考えられる歌手が戻ってきてホッとしている。

ジークムントのVentris…最終的には普段の悪さとあまり変わりばえしない出来。
ぶれ歌唱が酷い。もう少しいい時もあったが、なかなか難しいところ。
最近、ボータの逝去がヘルデンのやりくりに与えている影響を実感することが多い。

その分ジークリンデのNylundがこの役の混乱にやっと終止符を打ってくれた。
今の演出では初めてでもあるし、整えにくそうな箇所もあったが、
美声と自然な表現に感情移入できる。
2-3のアリアや3-1、妊娠を告げられた時の救いを求める繰り返し
(ここのヤノフスキの響きの光がまたいい)、
そしてO hehrstes Wunderは外せない。

ブリュンヒルデのFoster…フラット癖にももう慣れた。
肝心なところで音楽に水を差すのは避けられないが、
役柄は深まっている気がしないでもない。

フリッカのBaumgartner…会話の部分はよかったのだが、
まとまったアリアのアップダウンにちょっと躓いたのが残念。
結局ここをまとめた人がいないままだったので、
何か歌いにくい動作があるとしたら気の毒だ。

フンディングのZeppenfeld…昨年は交代してくれて助かったが、
メインはグルネマンツだと思うので、とにかく大事に歌ってほしい。

ワルキューレは今年も他の端役の時の印象と変わらず。
好調不調まとめて、騎行やその後の嘆願の場面の音楽に反映している。
ラベル:バイロイト2017
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ネットラジオ・バイロイト2017 ラインの黄金

音源のみの感想。

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Das Rheingold

Musikalische Leitung : Marek Janowski
Regie : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm : Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert Jens Crull
Technische Einrichtung 2013-2014 : Karl-Heinz Matitschka

Wotan : Iain Paterson
Donner : Markus Eiche
Froh : Daniel Behle
Loge : Roberto Saccà
Fricka : Tanja Ariane Baumgartner
Freia : Caroline Wenborne
Erda : Nadine Weissmann
Alberich : Albert Dohmen
Mime : Andreas Conrad
Fasolt : Günther Groissböck
Fafner : Karl-Heinz Lehner

Woglinde : Alexandra Steiner
Wellgunde : Stephanie Houtzeel
Floßhilde : Wiebke Lehmkuhl

2017.7.29

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@ 音楽

2年目ということで、緩急やダイナミクスが歌に浸透し、
昨年より落ち着いた劇運びになっている。
ダイナミクスの方は歌唱とバランスを取る形だが、
緩急は自由度が増したので、歌詞の内容と音楽の結びつきを非常に鮮明に感じる。

また、鋭く引き締まった動機表現の中にも、
例えばラインの上昇の波の高音の重ね方や、ミュート音の使い分け、
跳ねるヴァルハラ、沸き立つフライアなど、
所々で個のフレーズに遊びの余裕というのだろうか、
スタイリッシュな装飾の要素が聞けるようになった。
場の変化を一瞬で決める熟練の技に、気が付くと感嘆のため息ばかり。

個人的には、黄金で提示された次の3晩に繋がる動機に、
今後の展開の兆しが見られることが嬉しい。
大きな理解の助けになるし、円環のイメージの強化に繋がる。
呪いや指環の権力行使はもちろん、
ローゲがほんの皮肉で嘆いてみせた下降メロディが起こす波紋や、
エルダの淡い幻想など、黄昏に通じるものは特に印象深い。

という訳で、聞き所は全編に散りばめられているが、
あえて言うなら、対話に炎の繊細な変化が加わった方が持ち前の煽りに勢いが出るので、
ローゲの登場後となるか。

A 歌手

ほぼ全体が改善傾向にある。

ヴォータンのPaterson…立ち上がりは今年も手探りだったが、
節回しは安定したと思う。後半にかけて徐々に上げていく様子。
4場のアルベリヒとの対峙は音楽含めて良い緊張感を維持。

アルベリヒのDohmen…昨年以上に好調。
多分歌唱としてはもう少し端正な方が理想なのだろうが、
節回しの癖も含めて、アルベリヒの捻じれた性質に定着している感あり。

ローゲのSaccà…今年も伴奏と合わせるのに苦労しているが、
修正できる余裕はある。
徐々に回しつつ、3場には安定してくるので仕事は十分こなしていると思う。

他の男声陣にもブレーキという程の問題はなし。かなり好スタートなのがミーメのConrad。
また、フローが初日のマイジンでダーフィトを歌ったBehleに代わり、
落ち着いたリリック声に。最後に虹の橋が崩れそうなことはなくなった。
巨人はLehnerが復帰、Groissböck、ドナーのEiche、各々ほぼ去年の調子を維持。

女声陣は、今年変わったフリッカのBaumgartnerが、
なかなか安定しなかったこの役にある程度の落ち着きをもたらした。
フライアのWenborneも声に伸びがあり、うまく収まっている。
Weissmannの調子は相変わらずだが、ラインの乙女は良い滑り出し。
ラベル:バイロイト2017
posted by rikka at 14:32| ネットラジオ・バイロイト 2017 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする