2016年08月04日

ネットラジオ・バイロイト2016 トリスタンとイゾルデ

音源のみの感想。

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Tristan und Isolde

Musikalische Leitung:Christian Thielemann
Regie:Katharina Wagner
Bühne:Frank Philipp Schlößmann
Matthias Lippert

Kostüm:Thomas Kaiser
Dramaturgie:Daniel Weber
Licht:Reinhard Traub
Chorleitung:Eberhard Friedrich

Tristan:Stephen Gould
Marke:Georg Zeppenfeld
Isolde:Petra Lang
Kurwenal:Iain Paterson
Melot:Raimund Nolte
Brangäne:Claudia Mahnke
Ein Hirt:Tansel Akzeybek
Ein Steuermann:Kay Stiefermann
Junger Seemann:Tansel Akzeybek

2016.8.1

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@ 音楽

1幕は5割方ブルックナー。再聴したが第一印象はあまり変わらなかった。
いやむしろブルックナーはこういう部分を参考にしてるのか、と勉強になるほど。
そもそも、同じ音型の繰り返しがいけない。
イゾルデの怒りが沸騰する部分のベースラインや
タントリスの歌の弦の分散和音風の伴奏、
1-5の名誉や嘲笑の反復。下降や裏拍がからむとなお可笑しい。
やっと媚薬とその後の怒涛の二重唱でロマンが来たかと思いきや、
Heil!の合唱と別働隊ファンファーレのフィニッシュですぐまたブルックナー節の返り咲き。
ブルックナーのワグネリアンとしての熱意を改めて感じた次第。

でもつぶやきでも触れたが、こういう妙な方向の自由さが表れている方が、
素のティーレマンぽくて面白いかもしれない。

2幕に入って夜の歌の先触れに差し掛かったあたりで、
緩急や流れのぎこちなさが吹っ切れた感あり。
去年は同じ頃合いから独自のコスモ路線を突き進んでいたのが、
今年は歌に呼応するかのような感情の高揚を作り上げている。
夜の歌や死の歌は和声に包み込まれ、Habet acht!の小宇宙の響きが美しい。
情熱の赴くままに表現しても逸脱しないような、
音楽との共鳴に至る、そんな雰囲気だ。トリスタンの響きにはそういう陶酔がある。

そして3幕はほぼ忘我の境地。
グールドの熱演との駆け引きで音楽は否応なしにハイテンションになる。
オケのアンサンブルも見事で、愛の死の頂点は、
いつものティーレマンのコスモとはまた違った突き抜けた響きだった。
どうしても外せない愛の呪いと2・3幕最後の極端な引き伸ばしだけは微妙だが、
3幕は確か事が全て済んだ後の回想演出だったはずなので、
この内容だと違和感は必至だろう。

A 歌手

トリスタンのGould…天晴れ、キングオブ棒歌唱。
彼のトリスタンを聴いた中では最高の出来じゃないだろうか。
登場から声の伸びがあり、2幕以降は伴奏を牽引する熱唱。狂乱ではまさかの泣き演技。
これはリサイタル状態の立ち位置も関係していると思うが。
おかげでティーレマンのテンションの針も振りきれんばかりだ。
その漢気、確かに受け取った。我が道突き進んで欲しい。

イゾルデのLang…一応声は来ているが、
キャラ違いでフレージングには非常に違和感がある。
この発声が不自然に作られたものではないことを祈る。

マルケのZeppenfeld…グルネマンツを歌い切った程なので、間違いなく昨年より上向き。
演出を見る限り悪人設定だったが、声のみでは全くそうは感じられない。
今の時代、設定との落としどころを見つけるのも大変だと思う。

クルヴェナールのPaterson…彼もヴォータンを歌うくらいだから、
調子は悪くなさそうだ。3幕は静かな動きの回想とはやや離れた、人間味のある歌。
グールドの体当たり歌唱に呼応して熱を帯びる。

ブランゲーネのMahnke…マリーとブランゲーネ二役だったC.Mayerの代役。
結局今年もぶれ歌唱を聞く羽目に。立ち上がりは酷過ぎて気の毒だったが、
2-2のHabet acht!になると遠目で響きに包まれるのであまり目立たない。
ぶれなければ綺麗な声なのに、残念。

他、メロートのNolteは細め、舵取りのStiefermannは一瞬で印象が薄く、
Akzeybekはこの日も無難に張り上げている。
このままだとキャラクター役の方向へ進むのかな。

posted by rikka at 01:40| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月02日

ネットラジオ・バイロイト2016 神々の黄昏

音源のみの感想。

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Götterdämmerung

Musikalische Leitung:Marek Janowski
Regie:Frank Castorf
Bühne:Aleksandar Denič
Kostüm:Adriana Braga Peretzki
Licht:Rainer Casper
Video:Andreas Deinert
Jens Crull

Chorleitung:Eberhard Friedrich

Siegfried:Stefan Vinke
Gunther:Markus Eiche
Alberich:Albert Dohmen
Hagen:Albert Pesendorfer
Brünnhilde:Catherine Foster
Gutrune:Allison Oakes
Waltraute:Marina Prudenskaya

1. Norn:Wiebke Lehmkuhl
2. Norn:Stephanie Houtzeel
3. Norn:Christiane Kohl

Woglinde:Alexandra Steiner
Wellgunde:Stephanie Houtzeel
Floßhilde:Wiebke Lehmkuhl

2016.7.31

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@ 音楽

生放送でこんな名演を聴ける日が来るなんて。本当に言葉にならない。
この数時間だけは何も要らない、この音楽さえあればいい、
心底聴き続けて良かったと思えるひとときだった。

丹念に序章を作り上げる黄金に始まって、爆発的なワルキューレ、
闇と光のジークフリートと繋いで音楽の流れと響きは完全にヤノフスキのものに。
黄昏はピットが融和して、まさに自由の境地。
極限集中のトランス状態が想像できるような、そういう劇的緊張感に満ちていた。

この日も聴き所は全て。
高らかな英雄と万感こもったジークフリートの愛が胸を打つ夜明け〜ライン騎行、
テンポと重厚さのバランスが絶妙な血の盟約、
音色の使い分け、切れ味鋭い合いの手、
崩れない3拍子と完璧に決まっているハーゲンと合唱の2幕3場。
その後沸騰する凄まじい復讐。
そしてこれが聴けるのを待っていた、葬送の剣のTpから二連打への突入。
怒涛の終曲に、消えるジークフリートと世界救済の美しさ。
挙げればきりがないが、あらすじ説明の動機表現などももちろん鮮明なので、
これまでの物語を示唆する場面は非常に感慨深い。

オーケストラは完全燃焼。言うまでもなく素晴らしい。
全体が本格的にまとまったのは中休みを挟んで後半に入ってからだろうか。
今年はHnのSiegfriedrufはクレジットあり(BRSOのCarsten Carey Duffinさん)。
黄昏でも同様の出番かはわからないが、
ソロ以外でも角笛系フレーズは概ねよく当たっていた。


A 歌手

ここにもし往年の名歌手レベルの歌唱が加わっていたら…という考えも一瞬浮かんだりしたけれど、
それで逆に難しくなることもあり得る。
ひとまず当たり障りのない程度に音楽が進行できて幸運だった。

ジークフリートのVinke…酷い。酷いが音程はそこそこクリアしているから無視できる。
田舎侍枠に1人追加。

ブリュンヒルデのFoster…フラットに加えて下りの音程が崩れがちだが、
同じく慣れで無視できる。

ハーゲンのPesendorfer…暗めの声質は合う。
ミリングの代役で、準備の時間がどの程度あったかわからないし、
落ち着かせるのに少し時間がかかるのは仕方ないところ。
2-3で張り上げても崩れなかったし、
2-1の陰鬱な様子や捨て台詞の叫びも効果あり。
フレージングに芯が少し足りないかもしれない。

グンターのEiche…Heil!と称賛されるような歌唱とは言い難く、
演技力と声量でカバー。黄金のドナーに同じく、存在が空気ということはなくなった。
バックのギービヒの動機が高らかなので、自然とそちらに注意が行く。

アルベリヒのDohmenは立ち位置が近いのか、声を大きめに拾っている。
最後まで去年より好印象。
ヴァルトラウテのPrudenskayaはかなりこもった感じのメゾで、
節回しも不慣れな様子だったが、ぶれ歌唱よりはまだしも。

グートルーネのOakesは継続して歌っている慣れを感じる。
ノルンとラインの乙女の内2人は兼任。ラインの乙女は出落ちがあり、
昨年までの方が安定していたのは黄金と同じ。
第2のノルン&ヴェルグンデのHoutzeelが今一つか。音楽の雄弁さで後には残らない。

posted by rikka at 23:33| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月01日

ネットラジオ・バイロイト2016 さまよえるオランダ人

音源のみの感想。

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Der fliegende Holländer

Musikalische Leitung:Axel Kober
Regie:Jan Philipp Gloger
Bühne:Christof Hetzer
Kostüm:Karin Jud
Licht:Urs Schönebaum
Video:Martin Eidenberger
Dramaturgie:Sophie Becker
Chorleitung:Eberhard Friedrich

Daland:Peter Rose
Senta:Ricarda Merbeth
Erik:Andreas Schager
Mary:Nadine Weissmann
Der Steuermann:Benjamin Bruns
Der Holländer:Thomas J. Mayer

2016.7.30


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@ 音楽

今年はヤノフスキのリングに挟まれているせいか、
音のまとまりや、後期作品と比較した時の劇運びの緊張感が軽かったりするので、
印象は薄れ気味かもしれない。

仕事としては昨年同等か、緩急や描写の面でやや上向きか。
まだ全体の響きは粗めだけれど、ずっしりした厚みだけじゃなく、
時々高音に艶も感じるようになったし、
歌唱の前後や合いの手の形は例年通りほぼまとまっている。
音楽としては丁寧な方向に向かって、落ち着きが出てきたように思う。
今年も聞き所は序曲〜オランダ人のアリアの伴奏や、
1幕から2幕、2幕から3幕への間奏、各幕終盤の山場の作り方など。

あとは普通の劇場指揮からもう一歩踏み込んで、
楽曲に対する独自の表現を増やしたいところ。
どんな演出にも対応するとなると、結局無難な音楽に行きつくしかなくなってしまうので、
それとは別に曲自体への個の解釈みたいなものが伝わるようになれば。

A 歌手

オランダ人のT.J.Mayer…オランダ人の動機は多少詰まったが、
言葉やフレージングはまずまずの出来。ラストの名乗りも決めた。
ただ声が遠かったり、伴奏とのズレや二重唱・三重唱のバランスなど、
今年からの登場で演出になじむには時間がかかりそう。

ゼンタのMerbeth…例年通り出だしから最後まで不安定歌唱を貫いた。
まあ、バラードのアップダウンをこなせる歌手を探すのは難しいので、
声がイメージから大きく外れていないだけで妥協するしかないのかも。

ダーラントのRose…一瞬好人物に設定変えしたかと思えるようなソフトな印象だったが、
2-3の言い捨て演技からするに、やはり打算的な父親らしい。
前任のK.ユンがかなり腹黒だったので、これはこれで面白い。
歌はもう少しはっきりしても。

エリックのSchager…もういい、声量があるのはわかったから、
そんなに押しまくるのやめてくれる?という感じで声だけ飛び抜けている。
別の意味で振られキャラ。
個人的にはフレージングの方にも気を使って欲しいのだが。

舵取りのBrunsは最後の1フレーズまさかの落ちだったが、
もうこの規模の脇役にはもったいないかな。
マリーのWeissmannはC.Mayerから急遽代役。穴埋めで精一杯な様子だが仕方ない。
合唱は途中走ったりもしているが、ほぼこれまで通りの出来。

posted by rikka at 22:16| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月31日

ネットラジオ・バイロイト2016 ジークフリート

音源のみの感想。

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Siegfried

Musikalische Leitung:Marek Janowski
Regie:Frank Castorf
Bühne:Aleksandar Denič
Kostüm:Adriana Braga Peretzki
Licht:Rainer Casper
Video:Andreas Deinert
Jens Crull

Siegfried:Stefan Vinke
Mime:Andreas Conrad
Der Wanderer:John Lundgren
Alberich:Albert Dohmen
Fafner:Karl-Heinz Lehner
Erda:Nadine Weissmann
Brünnhilde:Catherine Foster
Waldvogel:Ana Durlovski

2016.7.29

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@ 音楽

この日も音楽的には何も言うことはない。
聴き所として、基本が2人対話芝居なので、その描き分け方。

ジークフリートになると、黄金の時のような合いの手の上昇音型などはあまり挟まず、
Aが話す間はAにまつわる動機の反復、
Bが話す間もB関連の動機を反復して緊張感を高めるという風に、
瞬間の煽りではなく、盛り上げる感覚が持続的に変わる。
妬みを背負っているキャラがいる限りその雰囲気はループするわけだ。

それをヤノフスキの響きと技で表現されると、
持続する分一回のダメージが大きくなっているので、
否定的な感情が過不足なく込められた大蛇や呪い、
あるいはニーベルンクの動機に包まれて退路を断たれそうな不安感が漂うことになる。
逃げ出したくなるジークフリートに心底同情するほどに。
だからこそ剣やジークフリートの動機の輝きも引き立つのだが、
その際立たせ方には毎回唸らされる。

大蛇やミーメを片づけた後に来るのが、前回触れた澄んだ純粋な響きへの変化。
小鳥の助言を聞くジークフリートの切なさ、エルダの透明な悲哀、
岩山の頂上での幻想的な音など、このあたりの響きの感覚は独特で美しい。
極めつけはジークフリートの愛。3-1、さすらい人の終盤のくだりでこのフレーズが湧きあがる瞬間は、言葉にならないものがある。

他、各所にあるクライマックスは大袈裟でも迫力不足でもない綺麗な形で決まっていて、
オケからも完全にヤノフスキの音が引き出せていると思う。

A 歌手

ジークフリートのVinke…ハイCなどよりふごふご歌唱をどうにかしてほしいが、
音楽が崩れるほど外れているわけではないので、妥協の線。

ミーメのConrad…立ち上がりは問題ないように思えたものの、
鍛冶の歌で少し詰まったのもあって1幕終盤はぐらつきがち。
2幕は大勢に影響ない程度に立て直しているが、
3場の自白のあたりはやはり少し厳しくなっている。

さすらい人のLundgren…声質や声量は悪くない。
厳しそうな高音は当たっているし、前の晩ほど伴奏とのずれもない。
あとは安定感が出れば。

ブリュンヒルデのFoster…フラットしたり詰まったりと、事態は特に変わらず。
一応頑張りは伝わってくるのだが、毎回あまり成功していないのが辛いところ。
聴きながら黄昏が残っていたことを思い出した。前の晩同様、忘れて伴奏に集中したい。

アルベリヒのDohmen、ファーフナーのLehner、
エルダのWeissmannはそれぞれ黄金の調子を継続。
森の小鳥のDurlovskiは緊張気味なのか、早回しで突っ込むのでヒステリックに聞こえる。
posted by rikka at 18:01| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月29日

ネットラジオ・バイロイト2016 ワルキューレ

音源のみの感想。

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Die Walküre

Musikalische Leitung:Marek Janowski
Regie:Frank Castorf
Bühne:Aleksandar Denič
Kostüm:Adriana Braga Peretzki
Licht:Rainer Casper
Video:Andreas Deinert
Jens Crull

Siegmund:Christopher Ventris
Hunding:Georg Zeppenfeld
Wotan:John Lundgren
Sieglinde:Heidi Melton
Brünnhilde:Catherine Foster
Fricka:Sarah Connolly
Gerhilde:Caroline Wenborne
Ortlinde:Dara Hobbs
Waltraute:Stephanie Houtzeel
Schwertleite:Nadine Weissmann
Helmwige:Christiane Kohl
Siegrune:Mareike Morr
Grimgerde:Wiebke Lehmkuhl
Rossweisse:Alexandra Petersamer

2016.7.27


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@ 音楽

今回は何も言うことはない。聴けばわかる。

1幕の冬の嵐に3幕の世界救済など、ヘタレ歌唱のフォローで、
ここぞという時のために積み上げた劇的効果のフィニッシュブローに手心を加えなくてならないのが本当に残念だが、それを補ってあまりある音楽。

聴き所は冒頭の嵐の描写からラストのジークフリートまで全てだけれど、
特に3幕は開始から鋭い的確な厚みと躍動感の技が光る騎行に、
遠目にも既に凄まじいヴォータンの襲来と、
煽りが沸騰するどころか連発花火の如し。
告別への突入が決まった瞬間は心を揺さぶられずにはいられない。

そして間奏のヴェルズンクへの愛の爆発。
ああいう形の強烈な引き伸ばしは、最近のヤノフスキでは珍しい部類に入るのではなかろうか。
曲自体の力もあるが、感極まる瞬間だった。

後は音作り。鳴った瞬間に引き込まれる、純粋な悲観のある響き。
そうした悲観的な響きをこめられる指揮者の例は他にもあるが、その加減はやはり様々だ。
言葉にするのは非常に困難だが、ヤノフスキの場合は響きそのものの悲哀というべきか。
強奏では突き抜けるように、弱音部は淡く儚くと厚みによって配分が変化しても芯はぶれない。
(多分旧東独系の響きからの個性…と言っても定義はしづらい、あくまで個人の感じる雰囲気。)
私が好きなのは後者の方の、少し幻想が入った澄んだ純粋さで、
こちらも冬の嵐や死の告知あたりの伴奏を聞く限りでは、
次第にまとまってきているような気がする。

A 歌手

ジークムントのVentris…1幕の昔語りから呂律が微妙になり、
冬の嵐直前で喉がからんで万事休す。その後は焦りからかミスが出て、
立て直そうとするも既に遅し。生放送の時の1幕終盤は剣の動機だけが慰めだった。
2幕はいくぶんマシだが、カラオケで十分。

ジークリンデのMelton…声そのものや序盤など楽な音域の部分はまずまずだったが、
高音も低音も当てられず最初のアップダウンであっさり崩れた。
交代した事情もあって同情できなくはないし、
伴奏も難しい部分はインテンポで拍子の頭拍をしっかり入れていたりしたのだけれど、
致し方ない。

そういう訳でフンディングのZeppenfeld、代わってくれて本当に助かった。
フンディングの動機の迫力が生かされる1幕の救世主。

ヴォータンのLundgren…他の歌手同様、モノローグなど長回しで伴奏とずれて音程がやや混乱気味になるが、ひどい声枯れや崩壊なしに告別を締められたので一安心。
ラストは彼自身も胸に迫るものがあるように聞こえるが、
厳しさもひとしおだから、どうだろう。

ブリュンヒルデのFoster…フラットにずれまくり、
今年もジークリンデと似た者姉妹の宿命は逃れられなかった。
伴奏が昨年までと別次元なので残念だが、もう二晩我慢するしかない。

フリッカのConnollyは前の晩からほぼ変化なし。
今年はまとまるといいなと思っていたアリア風の部分は結局フライング。
ここも伴奏が丁寧に拍子を提示していただけに惜しかったけど、
最終的には芝居でまとめたので後を引くことはない。

ワルキューレは他の公演に出演している人はその時の印象と大差ない。
1人あげるならオルトリンデのHobbsか。
上記したが騎行の音楽が素晴らしいので、個人より流れに集中できる。

posted by rikka at 19:05| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月28日

ネットラジオ・バイロイト2016 ラインの黄金

音源のみの感想。

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Das Rheingold

Musikalische Leitung:Marek Janowski
Regie:Frank Castorf
Bühne:Aleksandar Denič
Kostüm:Adriana Braga Peretzki
Licht:Rainer Casper
Video:Andreas Deinert
Jens Crull

Wotan:Iain Paterson
Donner:Markus Eiche
Froh:Tansel Akzeybek
Loge:Roberto Saccà
Fricka:Sarah Connolly
Freia:Caroline Wenborne
Erda:Nadine Weissmann
Alberich:Albert Dohmen
Mime:Andreas Conrad
Fasolt:Günther Groissböck
Fafner:Karl-Heinz Lehner
Woglinde:Alexandra Steiner
Wellgunde:Stephanie Houtzeel
Floßhilde:Wiebke Lehmkuhl

2016.7.26


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@ 音楽

期待通り。毎度のブルックナーや突然ロシアン金管もそれはそれで面白い個性なのだが、
歌劇場指揮でバイロイトのリングを聞くことにはまた別の感慨がある。

ヤノフスキの音楽は(安直な例えが許されるなら)、
手数の多いボクサーや短剣・細剣士タイプと言えばわかりやすいか。
同じように動機を紡いでドラマを作り上げる指揮でも表現の個性は人それぞれ。
ヤノフスキの場合は、その丹念に刻まれる動機の僅かなフレーズまでもが、
鋭く正確に表現の的に突き刺さるような感覚がある。
クリティカルヒットを積み重ねて最後は致命的な一撃へ至る、そういうイメージだ。
なのでクライマックスを必要以上の爆音やしつこい溜め方で引き伸ばさなくても、
十分な衝撃が得られる。

もう一つ、上昇音型(たまに下降クレシェンドもあるが)を、
急激に沸騰させるacce&crescの煽り。
それ自体は楽譜にあれば普通に行われる表現なのだけれど、
ヤノフスキの煽りは際立っていて、
瞬間加速の加減といい、タイミングといい、名人芸の域。
これはローゲの炎やニーベルンク関連の低音上昇フレーズを合いの手にして対話を盛り上げる黄金にはうってつけの技法で、動機表現がクライマックスへの指向性を帯びて、
劇的緊張感の維持に絶大な効果をもたらす。
実際、2場のローゲ登場から3場のアルベリヒとの対峙に至る場面は白眉。

もちろんこうした仕掛けはうまく行かないケースもあって、
例えば歌手がずれれば積み上げてきた効果を一時的に崩さなければならなくなるし、
オケに相応の練度が必要なのは言うまでもない。
オケの音の質に関しては去年の方が良かったような気がするが、
歌手は均せば改善傾向にあり、聞き応えのある音楽になっている。

A 歌手

ヴォータンのPaterson…立ち上がりのぶれと時々品に欠ける節回しが気になるが、
声が没個性とか回すだけで四苦八苦というわけではないので、
彼なりの仕事をこなしていると思う。

アルベリヒのDohmen…更に深まった。声の伸びもあって好発進。
しっかりしたペース配分で終盤に向けて合わせてきている。
この日に限っては経験の差でアルベリヒ主人公説が成立しそうだ。
伴奏の勢いに後押しされ、指環への呪いが一段と際立つ。

ローゲのSaccà…今年変わったキャストのせいか、
伴奏より突っ込み気味なのが惜しいが、キャラクター役も悪くない。
彼も序盤から徐々に調子を整えていく形。
最後まで言葉は回せているしフレージングも安定している。

他の男声陣では、ミーメのConradは連投の1人で、
限られた出番ということを除けば一番の出来かも。
今年は伴奏が細かい節回しに対応できているので、よく乗れている。
ファーゾルトとファーフナーはGroissböckとLehnerに交代。
Lehnerの方はあまり長くは維持できなさそうだが、
少なくとも去年のキャラ違い&ヘタレ大蛇兄弟よりは上向きで、
両者の性格が区別できる。
ドナーとフローもそれぞれEicheとAkzeybekに変更。
片や棒歌唱、片や威勢の良さのみが売りのコンビだが、
こちらも去年の存在感希薄とノーコン歌唱コンビからはぐっと修正されている。

女声陣ではまずフリッカのConnollyだが、
嘆きを多めに前面に出す設定なのか、思った程の安定感は得られず。
それでも前任者のマーンケからは大きな前進で、
対話の流れを阻害するようなことはなくなった。
エルダのWeissmannも連投組。一応出来は上向きだと思うが、声の物足りなさも継続中。
フライアのWenborneは声的には変わった意義を感じない。
ラインの乙女はまずまずのレベル。去年までに比べるとやや落ちるが、
フロスヒルデのLehmkuhlは安定している方かな。

posted by rikka at 16:55| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月27日

ネットラジオ・バイロイト2016 パルシファル

バイロイト開幕。今年の新演出はパルシファル。
生放送時にネットで映像ストリーミングあり。

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Parsifal

Musikalische Leitung:Hartmut Haenchen
Regie:Uwe Eric Laufenberg
Bühne:Gisbert Jäkel
Kostüm:Jessica Karge
Licht:Reinhard Traub
Video:Gërard Naziri
Dramaturgie:Richard Lorber
Chorleitung:Eberhard Friedrich

Amfortas:Ryan McKinny
Titurel:Karl-Heinz Lehner
Gurnemanz:Georg Zeppenfeld
Parsifal:Klaus Florian Vogt
Klingsor:Gerd Grochowski
Kundry:Elena Pankratova

1. Gralsritter:Tansel Akzeybek
2. Gralsritter:Timo Riihonen

1. Knappe:Alexandra Steiner
2. Knappe:Mareike Morr
3. Knappe:Charles Kim
4. Knappe:Stefan Heibach

Klingsors Zaubermädchen:Anna Siminska
Klingsors Zaubermädchen:Katharina Persicke
Klingsors Zaubermädchen:Mareike Morr
Klingsors Zaubermädchen:Alexandra Steiner
Klingsors Zaubermädchen:Bele Kumberger
Klingsors Zaubermädchen:Ingeborg Gillebo
Altsolo:Wiebke Lehmkuhl

2016.7.25

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@ 音楽

ネルソンス降板からひと月足らずで新演出の指揮、
折しも周辺地域ではテロ事件発生。
そうした事情を鑑みるならば、今回のヘンヒェンの最も評価すべき点は、
劇場内外が難しい状況の中で波乱なく公演をまとめたことに尽きる。

よって、音楽に関しては可もなく不可もなく。
目立った長所は大まかに全体がまとまっていることや、
聞きやすい軽めの緩急、歌唱のフォローといった実践的な側面だろうか。
音作りはどちらかというと地味で変化に乏しいため、
基本のくすみがちな弦の響きが単調さの一因となって聞く士気を鈍らせる。
強奏が荒れるのは仕方ないけれど、
編成以上の重厚さはないのに、各幕の終盤など力が入るとフレージングがしつこくなるのも気になる。
それと、今回は読み替え演出と分かっているので、
動機など細部の表現が緩めでもある程度は許容範囲だが、
聖杯やMitleidの反復など必要な部分まで流されると感情移入しづらい。

もちろん多くを求めることはできないし、
演出の内容に(よく言えば)この内省的な響きがそぐわないということでもないが、
もしネルソンスだったらどう化学反応したかには興味がある。

A 歌手

グルネマンツのZeppenfeld…大健闘と言っていい出来栄え。
上記した軽め緩急に難所の巻き加減のフォローもあって、無事聖金曜日を歌い切る。
所々表現を乗せる余裕もあり、重すぎず細すぎずの若々しいグルネマンツ。
眼鏡演技がチャーミング。ティトゥレルの死に涙する場面など、長回しの表情不足をカバーできる。

パルシファルのVogt…まだ音域が下がりきらず時々ボカロ歌唱が出るけれど、
2幕や3幕の終盤の声が合う所ではきれいに決まっている。
主役が普通に聞ける僥倖がこの後あるかどうかわからないし、
映像があれば多少のことはカバーされるので問題ない。
3幕の洗礼から聖金曜日の表情や仕草にはハッとさせられた。
ただ、戦士→空手家のクラスチェンジとラストのスーツはちょっと吹いた。
アーマー脱いだら何故黒道着?葬祭の参列だって司祭服で良さそうなものを何故スーツ?
最後はスーツ縛りがKFVのお約束なの?

クンドリーのPankratova…2幕途中枯れ気味なところもあったが、
水分補給などで自然に立て直して最後までよく当てている。
クンドリーを持ちこたえられる歌手も少ないので、今後大事に歌ってほしい。
読み替えの関係で落ち着いたキャラ設定なので理解はしやすい。

アンフォルタスのMcKinny…彼は演出上容姿に負うところが大きいかな。
白装束のすっきりした立ち姿ほどノーブルな声質ではなく、
少しこもりがちでキャラ寄りの声。
でも歌唱が特に悪いというわけではないので、初演の仕事としては十分だと思う。

クリングゾールのGrochowskiは逆に品のある歌唱。歌に関しては問題ないが、
聖者への憧れを異端の行為で示す、葛藤のあるキャラ設定をどう表現するかで難しい役どころ。

ティトゥレルのLehnerは特に凝った登場でもないし、短い出番ならスルーできる。
棺の中身が砂だと吸血鬼そのもの。実際息子の血で生きているのだけれど、
微妙な幻想の混じり方。
棺の蓋にはT十字架。出自に異教の要素がある、もしくはクリングゾールの浄化を兼ねてのものか。
救済に差別がないことの表れ。

他の端役たちも同様に歌より演技上の性格付けの方が記憶に残った。
合唱は通りやすい位置取りに控え目な動きで、よく拾えている。

B 演出

現代読み替えで、舞台はイラクのシリア・トルコ国境近くの地方に位置する、
空爆を受けたとある聖堂。
避難民や巡回の兵士たちに休息の場を提供している。
元々内在する聖×邪教の要素を利用するのは悪くない発想だが、
あえて今上演する必要性については思うところがなくはない。

読み替え上、元の作品内容との擦り合わせが難しい点が二つ。
1つはクンドリー=聖杯が提示されないこと。
完全にキリスト化したアンフォルタスに象徴の役割が集中した結果、
現実の虐げられたイスラム女性になっている。
よって同情を禁じられたという表現が薄く、自然なキャラではあるのだけれど、
逆に受け狙い要素とも取れそうだ。
上記した聖杯やMitleidモティーフの表現がしっくりこないのは、
この辺の設定が影響するのかもしれない。
聖杯がないとラストの解決策が紛争の歴史含む過去の遺物からの解放というような…
ある意味丸投げな雰囲気が漂う。

それから矢白鳥の時の子供や2幕のアンフォルタス、3幕の家族など、
心象や追憶の表現の重ね方。
映像なら理解しやすいが、舞台上の処理や効果は疑問。
花の乙女の無駄なヌードなどと同じく、
何かそういう場面を作る義務があるのかという邪念が湧いてくる。

ともあれ概ね筋はまとまっているし、舞台や照明は簡潔で見やすい。
動きは控えめで派手に奇を衒うこともなく、歌唱への配慮もある。
演出家に対するブーイングも慣例的なものにとどまった様子。
落ち着いて見られる演出だと思う。
posted by rikka at 15:38| ネットラジオ・バイロイト 2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月05日

ネットラジオ・バイロイト2015 神々の黄昏

音源のみの感想。

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Götterdämmerung

Musikalische Leitung : Kirill Petrenko
Regie : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm : Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert
Jens Crull

Chorleitung : Eberhard Friedrich

Siegfried : Stefan Vinke
Gunther : Alejandro Marco-Buhrmester
Alberich : Albert Dohmen
Hagen : Stephen Milling
Brünnhilde : Catherine Foster
Gutrune : Allison Oakes
Waltraute : Claudia Mahnke

1. Norn : Anna Lapkovskaja
2. Norn : Claudia Mahnke
3. Norn : Christiane Kohl

Woglinde : Mirella Hagen
Wellgunde : Julia Rutigliano
Floßhilde : Anna Lapkovskaja

2015.8.1

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@ 音楽

劇的な進化を遂げたとはまだ言い切れないが、
曲に対して勝ち目のない状況に比べたら、少なくない進歩が見られることは確か。

序盤はやはり劇運びが今一つ決まらず、
夜明けから二重唱への入り方、騎行、血の盟約、ハーゲンと合唱の場面など、
アウフタクトの緩急を凝りすぎたり、響きに厚みをうまく出せなかったり、
ダイナミクスを一方向にならし過ぎて平板な盛り上がりになってしまったりで、
曲の重厚さに反して他の演目の指揮者程の緊張感が中々得られなかった。

しかし2-4のブリュンヒルデが激昂した後、復讐が反復される辺りからオケに凄味が表れ、
2幕のフィニッシュをまとめ上げた後は、
3-3のブリュンヒルデ登場まで情景描写と主要動機に力がこもり、
アンサンブルと響きの充実で劇的緊張感を維持することができている。
アリア中のト書き表現は悪くないので、
ラインの乙女や記憶を取り戻す場面はそれぞれ黄金やジークフリートのくだりを想起。
リングの他の晩の音楽の示唆になれば、そこから受ける感慨も違ってくる。

ラストは主役の歌の不振と疲労の影響か、やや衰退気味に終わってしまったけれど、
この途中までの音楽が今後も安定して出せるなら、
壁を一つ抜けたことになるのではないか。

A 歌手

ジークフリートのVinke…立ち上がりの酷さは論外。何を歌ってるかわからない。
グラーネも全力で逃げ出しそうだ。
騎行の入りなど、グラーネだけ先に飛び出して、
英雄はオーイ待ってくれ〜の定番ギャグが思い浮かんでくる。
そしてその呂律が回らないやられキャラのまま最後までアホ声を張り上げる始末。
無視するのも結構骨が折れる。

ブリュンヒルデのFoster…控え目な立ち上がりかと思っていたら、
結局最後まで声量は増えず、増えるのはフラットする高音ばかり。
ぶら下がりが続くと時々前後の音程が怪しくなる。
歌が持ってくれないと、終曲に向けて緩急を動かしたくても動かせないのが辛い。
毎度ながらどうしようもない。

ハーゲンのMilling…まだ声が軽くて下がりきっていないので、2-3は少し苦しい。
低音でいくつか躓きがあり、その後は修正しながらの節回し。
ラストは僅かに割れてしまった。
大きな乱調はないので聞いている分には助かるが、大事に歌ってほしいところ。
ヴォータンと被る訳ではないが、ヴォータンがワルキューレの2-2で、
ニーベルンクの息子に捨て台詞的に与えた祝福の因果を思わせるところがある。

アルベリヒのDohmenは細部の節回しにはクセがあるが、2-1は流せるレベルになった。

グンターのMarco-Buhrmester…フレージングが全然流れないが、
去年と比べて声量は来ている。存在が空気と、微妙歌唱が気になるの間くらいの存在感。

女声陣で一番良かったのは今年もラインの乙女の3人で、3-1のアンサンブルは印象がいい。
その他はヴァルトラウテ&第2のノルンのMahnkeのぶれ歌唱を除いて許容範囲内の仕事。
ほぼ例年通りの展開。

2015年08月04日

ネットラジオ・バイロイト2015 さまよえるオランダ人

音源のみの感想。

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Der fliegende Holländer

Musikalische Leitung : Axel Kober
Regie : Jan Philipp Gloger
Bühne : Christof Hetzer
Kostüm : Karin Jud
Licht : Urs Schönebaum
Video : Martin Eidenberger
Dramaturgie : Sophie Becker
Chorleitung : Eberhard Friedrich

Daland : Kwangchul Youn
Senta : Ricarda Merbeth
Erik : Tomislav Mužek
Mary : Christa Mayer
Der Steuermann : Benjamin Bruns
Der Holländer : Samuel Youn

2015.7.31

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@ 音楽

序曲から非常にいい出だし。
波風を煽るような弦と単純伴奏部分のリズム刻みを利用して緩急を形作り、
引き締まった音楽に繋げていく劇場指揮。全体を終始緊張感が貫く好演。

また、彼の重心の低い響きが曲のカラーに合っている。
強奏から始まるためずっしりした迫力が出せて、雰囲気を作りやすい。
響きは少し粗めだけれども、ロシアン金管とか抜けやすい音だけ抜けてくるようなところはなく、
一定の厚みを維持しつつまとまっているので、
突然オランダ人関連の動機が鳴ってもほとんど崩れない。

情景描写の描き分けについても、曲がシンプルなせいか、
序曲からゼンタ、オランダ人、船乗りの合唱それぞれのフレーズについて、
歌唱を踏まえた提示がある。
タンホイザーの時よりはいくつか音色の変化を使った表現も感じられるし、
(前任者でスルーだった)糸車合唱の軽妙さも戻ってきた。

歌唱のフォローは相変わらず優れている。
あまり歌唱の立ち位置を考えていない演出だったはずだが、
タンホイザーの時と同じく合いの手が的確で、
導入部やアリア中の緩急、重唱への流れにほとんどぶれがない。
今年度からの担当ということを感じさせない安定感。

聞き所で唯一気になったのが3-1の船乗り合唱への入り方くらい。
好みの問題だが、あまり溜めずに緊張感優先だったのが割と意外だった。
その他は大体決まっている。序曲やDie Frist ist umの伴奏は期待通りで、
3-2のクライマックスの煽りも聞き応えあり。

A 歌手

オランダ人のS.Youn…本当のところ彼の歌唱より毎年伴奏部を聞いているけれど、
今年もできる範囲の仕事はしている。もう少し言葉が回ればと思うが難しい。
サポートが歌唱寄りなので、全体のペース配分は上向き。

ゼンタのMerbeth…いつもずれていた出だしのメロディもずれなかったし、簡単な部分は聞ける。
不安定だったバラードのアップダウンのフレーズは、
下降したところで一旦ブレスの間を取ってから上昇と、
おそらくは指揮者の、フレージングを落ち着かせるような配慮がある。
それでも今一つ歌えていないが、他の部分への影響は少なくなった。

ダーラントのK.Youn…余裕とまでは行かないか。時々詰まっているようにも聞こえる。
ただ、芝居を含め一定のレベルではこなしているので、特に問題はない。

エリックのMužek…彼も自分なりの仕事。
適度な声量とまずまず芯の通ったフレージングで、やはりゼンタよりは安定している。
3幕のアリアは高音も当たって後味のいい終わり方。

他、舵取りのBrunsは声が伸びていて上々の出来。
歌う分量を抜きにすれば一番良かったかもしれない。
マリーのC.Mayerは他の役に同じくスルーで、
女声合唱はバラつきがあるが、男声合唱の方は1幕から拾えている。

2015年08月03日

ネットラジオ・バイロイト2015 ジークフリート

音源のみの感想。

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Siegfried

Musikalische Leitung : Kirill Petrenko
Regie : Frank Castorf
Bühne : Aleksandar Denić
Kostüm : Adriana Braga Peretzki
Licht : Rainer Casper
Video : Andreas Deinert
Jens Crull

Siegfried : Stefan Vinke
Mime : Andreas Conrad
Der Wanderer : Wolfgang Koch
Alberich : Albert Dohmen
Fafner : Andreas Hörl
Erda : Nadine Weissmann
Brünnhilde Catherine Foster
Waldvogel : Mirella Hagen

2015.7.30

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@ 音楽

徐々に前進しつつある。
音源を聞く限りのK.ペトレンコの音作りの印象をもう少し噛み砕くなら、
他のヨーロッパ諸国風ではないという位のロシア風味とでも形容すべきか。
響きの個性があまり整っていない分、我流として貫くにも中途半端。
不安定さが面白いと言えるような魅力に即繋がる訳じゃないが、
今年はいくつかを除いてオケが善戦し、細部表現の彫塑が深まっているので、
目立つ主要動機が置いてある箇所の内の半分くらいは内容が感じられるようになった。
特に3幕のジークフリートの愛。
同じく3幕の炎越えに黄昏のラストが喚起されたり、
ブリュンヒルデにGötternotがフラッシュバックするといった、
いくつか他のリング作品に通じる音楽の示唆があったこと。
その他、1・2幕のミーメ関連の滑稽さ、
3-3のブリュンヒルデを見た時のジークフリートの動揺の様子、
その後の二人のバレエ風の詩的な情景など、
ささやかだが音楽に感情が芽生えたところもある。

また、劇運びについてもこれまでの特長の継続で、
リズム刻みがほぼ通して使える1幕や2-1・2-3は緊張感が持続するので聞きやすい。
逆に2-2の森のささやきや大蛇殺しはリズムから来る緊張が一時途切れ、
銃声など演出内容とも距離があるためか、音源だけでは盛り上がりに欠け、
3幕の前奏や3-3の目覚めから愛の挨拶の場面は音が荒れてアンサンブルが整わず、
単調なダイナミクスで、音楽がぎこちない。
こういう部分はオケ曲と伴奏、いずれも途上にある曖昧さが迷いを呼ぶのかもしれない。

A 音楽

ジークフリートのVinke…大体音程は当たっているが、
もこもこと舌足らずのような発音で歌詞が聞き取りにくく、洗練さとは程遠い。
なまくらノートゥンク。
でも聞き流せなくはないので、ライアンの気色悪さが無くなっただけ良しとしなければ。

ミーメのConrad…甲高い声とかなりテンションの高い芝居で、
最後まで維持できていた。個人的にはもう少し歌になっている方が好みだが、
これだけ回せれば特に文句はない。
2-3の自白のヒヒヒがなかなかいい感じ。お陰でその後の流れも盛り上がった。

さすらい人のKoch…今年は健闘している。フレージングはほとんど崩れなかったし、
まずまずの声量で締めくくった。一定の結果は大事。
2-1などはドーメンに触発されるのか、芝居に熱がこもる。

アルベリヒのDohmen…黄金に引き続き、彼の出番がある2-1と2-3が一番良かった。
歌になるから聞いてて浸れるのと、量が少ない分劇的に作る余裕がある。
ミーメとの対話が形になって面白い。

ブリュンヒルデのFoster…相変わらずの調子で、
派手にフラットして冴えないが、仕方ない。垢抜けないジークフリートには釣り合うかも。
上述したように、バックは時々いい雰囲気になるので、そちらに集中できなくはない。

他のキャストも各々の調子を継続。
小鳥のM.Hagenはヴォークリンデとほぼ変わりなく仕事をしている。
ファーフナーのHörlはフレージングが軽く、
登場した途端アルベリヒとさすらい人に倒されそう。なまくらノートゥンクにお似合いの獲物。
エルダのWeissmannは芯なし歌唱のまま。来年も予定されているので、諦めてスルーしかない。